カンボジア経済について

今、なぜカンボジアなのか?

経済特区

カンボジア

近年目覚ましい経済成長をとげているカンボジアは、ベトナムに続く新たな生産拠点として注目を集めつつあります。1993 年の内戦終結以降、多くの国からの支援によって経済成長を実現させてきたカンボジアにとって日本は最大の援助国である反面、民間企業の進出については積極的に行われてきたとは言えず、中国・韓国などの後塵を拝してきました。しかしながら昨今、多くの日本企業が工場を持つ中国では人件費高騰や反日的な思想によるストライキなどが起こり、またベトナムの人件費高騰による人手不足、タイでも今年7月の選挙で、低所得者層である労働者の支持を受けた貢献党が勝利したことによる労働者賃金の値上げなど、アジア各国で問題が顕在化してきています。

そういったアジア情勢を受け、日本企業もいよいよカンボジア進出に目を向け始め、ヤマハ、アシックス、ユニクロ、ミネビア、味の素、NTTコミュニケーションズなど大手企業が現地での事業展開を始めようとしており、また銀行最大手である三菱東京UFJ銀行も駐在所設置を発表しています。さらに2011 年7 月には、カンボジア初となる証券取引所が設置され、現在、国営企業3 社が株式上場を2011 年12 月に予定。その他10 社も株式上場の計画中とのことで、ますます日本企業の進出が加速されることは間違いありません。

  • カンボジア証券取引所(CSX)

    2011年7月にオープンしたカンボジア証券取引所(CSX)の受付

  • ボナ不動産

    カンボジア最大のネットワークを誇るボナ不動産

  • ミネビア工場

    ミネビア2011年12月操業開始 土地面積20ha

  • プノンペン証券

    証券取引事業のフルライセンスを認可されたプノンペン証券

カンボジアの魅力とは

中国、韓国をはじめ日本企業も進出を始めているカンボジアですが、特に注目すべきは以下の4 つです。

労働人口の拡大と安価な労働力

カンボジア平均年齢

カンボジアは、1970 年代ポルポト政権時代、知識人を中心とした約200 万人の人々が虐殺されたこととによりそれまで約800 万人いた人口が600 万人になるという悲しい歴史があります。そして、その後も内戦が約20 年間続いたことで、長い間労働人口が極端に少ない状態がカンボジアでは続いていましたが、内戦終了後の1990 年代からは、フンセン政権発足に伴う政治の安定化により急速に労働人口が増加しており、現在は、当時の約2 倍以上となる1400 万人まで人口が増加しています。

ポルポトの虐殺と長期間の内戦により、30 代以上の人口が極端に少ないというマイナス面もありますが、逆に総人口の54%が24 歳以下、平均年齢22.9 歳という周辺国と比べると圧倒的に若い人口構成は、労働人口(15 歳~64 歳)や生産人口の大幅な増加が見込まれ、労働力確保や市場の拡大に大きな期待が持てることを意味します。
またカンボジアの最低賃金(月額)は61 ドルと、ベトナム75 ドル、タイ157 ドル、中国(上海)170 ドルなどに比べて低水準で労働コスト上の優位性も高くなっています。
労働人口の拡大と安価な労働力こそが、各国がカンボジアで事業展開を決める大きな理由となっています。

インフラ整備の発展(電気、道路、インターネット)

国の発展にかかせない道路、電気、インターネットなどのインフラが、中国や韓国の投資により急速に進んでいます。
道路については、シングルナンバーの国道はすべて整備され、都市間の輸送時間は大幅に短縮されるようになりました。また、ベトナムのホーチミンからカンボジアの首都プノンペン、そしてタイのバンコクという巨大都市をつなぐ全長約1000kmの南部経済回廊が整備されたことで、各国間の輸送がこれまで以上に増加すると見込まれています。
電気についても、首都プノンペンはもちろん、地方都市のバッタンバンなども水力発電が開始される予定で、各都市への電力供給拡大が進められています。
インターネットについては、2009 年に光ファイバーが国道に沿って開通しており、都市部や国道沿いを中心にインターネット環境が整っています。NTTコミュニケーションズは、首都プノンペンの企業向けに、高速インターネットサービスを2011 年3月より開始しています。

投資優遇

投資優遇については、経済特別区が約20 以上もあり国内企業だけでなく海外企業も差別なく税制上の優遇を受けることができるため、日本企業を含む海外企業の進出促進に繫がっています。プノンペンにある経済特別区である工業団地では、ヤマハ、ミネビア、味の素などすでに11 社の日本企業がリース契約を完了しており、300 名~800 名規模での生産を行う工場としてすでに準備を開始しています。

★カンボジアにおける経済特別区とは

経済特別区(SEZ)とは、経済発展のために法的、行政的に特別な地位を与えられている地域を指します。カンボジアでは2005 年に経済特別区制度が導入されました。SEZ 進出企業は適格投資案件(QIP※)に与えられる通常の優遇措置に加え、全ての業種において付加価値税(VAT)が免除されます。
※QIP:Qualified Investment Project、適格投資プロジェクト
現在、カンボジア国内で認可を受けているSEZ は21 箇所あります。その所在地は、プノンペンを除くとそのほとんどが沿岸部もしくはタイ、ベトナムとの国境付近に位置しています。国境付近に位置することのメリットとしては、カンボジア側から見た場合にはタイのレムチャバン港、ベトナムのサイゴン港域などへのアクセスがしやすいことや、電力供給などにおいて自国より進んだタイ、ベトナムのインフラを利用することが可能であること、一方タイやベトナム側から見た場合には、自国の隣接地で安価な労働力を手に入れることができること、などが挙げられます。

民政による政治・社会の安定

1998 年の第一次フン・セン新政権発足に伴う政治の安定化や99 年のASEAN 加盟を機に、国際機関や二国間の支援に基づき本格的な国家再建に着手しています。また2000 年に入ってからの、①縫製業の輸出が大幅に伸長、②堅調な観光業、③良好な農業生産、④建設業の活況(住宅、ホテル、工場等)、⑤外国投資や市中銀行からの貸出の急速な進展など複数の要因に伴い、04年から07年までは二桁成長を続けるなど、GDP成長率の高さも世界から注目されています。2009 年は世界同時不況の影響で、この10 年で初めてマイナス成長となりましたが、縫製品の輸出増加や観光、銀行セクター、農業分野の成長により2010 年は再び6%の成長に回復し、2011 年も6%以上の成長が予測されています。

GDP成長率

安価な労働力と労働人口の拡大、インフラ整備の発展、投資優遇、そして政治・社会の安定。この4つが、海外展開を検討する日本企業にとってのカンボジアの魅力です。